「さあ行った行った」という命令形はなぜ過去形なのか

日本語で「さあ、行った行った」というのは、非常にぞんざいな、有無を言わさぬ命令形です。でも未来の行動を指示する命令形なのに、なぜ「行った」という過去形を使うのでしょうか。ところでロシア語にも同じような言い方があります。поити(パイチー、行く)の完了体過去形であるпошли(パシュリー)です。時制は過去形(完了体過去)ですし、使う場面は人を追い払うときの命令です。つまり、意味も語形も活用シーンも日本語と全く同じ。まさに「行った、行った」という意味、ニュアンスの言葉です。では日本語もロシア語もなぜ命令形を過去形で現すのでしょうか。先ほど日本語の「行った」を過去形と言いましたが、「行った」とは「行き・たり」が簡略化されたもの、そして「たり」とは完了を現す助動詞です。実は日本語で過去形といっている「~た」は、本当は完了形なのです。ではなぜ完了形が「強い命令」「ぞんざいな命令」を現すのか。完了というのは、いいかえれば「終わって、確定して、後戻りが効かない状態」ともいえます。つまり「行った行った」とは、「おまえが行くというのはもう確定したこと、決まったことだから」という意味合いになるわけです。ロシア語の完了体過去も同じロジックだと思います。